知らない人に「手編みのマフラー」を渡されるのは怖い
こんなことを言われたらどうだろうか。しかもこんな真夏に。暑さで頭がやられてしまったとしか思えない。
もし、手編みのマフラーを渡してきた相手が自分の好きな子だったら(重いし季節外れだが)喜ぶ人もいるかもしれない。しかし、相手が全く知らない人だとしたら恐怖以外の何物でもないだろう。
たとえ、ものすごく可愛い子であっても、何か裏があるのではないかと疑ってしまうはずだ。ましてや真夏に手編みのマフラーを渡してくるとか、どう考えても嫌がらせである。
知らない相手でも、自然な告白ならば嫌な気はしないが・・・
全く見覚えがない人だとしても、告白だけだったとしたらさほど怖くはない。
例えば、「挨拶しかしたことなかったから覚えてないかもしれませんが、実は以前、一緒の会社にいた時に一生懸命働いている姿に惹かれて…」などであれば不自然さはない。
付き合うかは別にして「ああ、あの会社、人数多かったし俺の知らない所で気にしてくれていたのか。嬉しいし、ありがたいな」とも思うだろう。
だが、突然知らない相手に『○○くん♡LOVE』なんて編まれた手編みのマフラーを渡された挙句、「私の一部だと思って使ってね」なんて言われたらたまったもんじゃない。
たとえ渡してきた人自身に問題がなくても、渡し方や渡した物が重すぎるので、何だか赤い毛糸は血で染めたものではないかと想像してしまうほど恐ろしい。
それに季節外れでもあるから、メンタル強めの人であっても物理的に使おうにも使えない。どうしても使ってほしいのであれば、真冬に極寒の地で渡してほしい。それならば生きるために使うだろう。
季節外れであれば使いようがない。いくら思いがこもっていても残念ながら一瞬にしてゴミになる。
こういう例をあげれば、簡単に「嬉しくない」「怖い」「押し付けがましい」と想像できる。もはや笑い話だ。
だが、意外と気をつけないとやってしまうのだ。特にビジネスにおいて。
一方通行のラブレター(広告・宣伝)は失敗する
広告・宣伝・告知において「強い思いがあれば伝わる」と思っている人がいたら恐怖の手編みマフラー女と同じだ。
ホームページやLP、チラシ、DMなどの広告を見ていると、社長や店主の熱い思いを書き連ねてものがある。
おそらく、社長や店主が考える、その会社や店の良さなのだと思われる。きっとそれをアピールしたいんだと思うし、アピールすれば集客できると思っているのだろう。
しかし、欲しくもない情報を「ね?すごいでしょ?」と押し付けられたら迷惑だ。
確かに、社長や店主が商品・サービスにかける情熱がすさまじいのもわかる。アピールしたいこともわかる。
だが、売る相手は基本的には一般人だ。専門家であっても、社長や店主ほどその商品・サービスには詳しくない。だから、一般人が「ほしい!」と思う情報を伝える必要がある。
読み手がほしいと思う情報は、自分にとってメリットがあることだ。いかに商品・サービスの性能がすごくても、自分にとって無関係の話ならば興味がない。
見栄えが良いオシャレ家電を探す相手にオシャレではないが性能抜群な家電をすすめるようなものである。
まずは、相手が何を求めているか何をしてもらったら嬉しいか考えるのだ。
広告もラブレターみたいなものだ。相手を振り向かせる必要がある。
いくら「好きです」「私ってこんなに尽くせるんですよ」と熱い思いを伝えたところで、「だから何?」と言われるだろう。大概は知らない相手なのだから尚更である。
だからこそ、いかに「あなたが理想としていたものであり、あなたにとってメリットがあるのか」をアピールすることが大事なのだ。
これを間違えると一気に恐怖のマフラー女になってしまう。きっと薄気味悪い企業・店扱いされるようになってしまうことだろう。
だからこそ広告や宣伝を作るときでも、自分の愛や思いを一方的にぶちまけるのではなく、相手が必要としているもの・相手がメリットに感じるものをアピールすることが重要なのである。