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「お元気様」等はポジティブ表現への置き換えらしい
「お楽しみ様」
「ワクワク様」
「お元気様」
こんな風に声をかけられたことはあるだろうか。どうやらこれら全て、「お疲れ様」のことを指すらしい。
今まで現実世界でお会いしたことはなかったのだが、Facebookなどのインターネット内では何度も見かけた。特にその発言者の方が嫌なわけでもないのだがなぜだか物凄くぞわぞわするのだ。
話を聞いたり、調べたところ、どうやら前向きな気分でいるために、ネガティブ表現をしないように、ポジティブ表現に置き換えているのだという。
つまり、『お疲れ様』の中の『疲れ』はネガティブ表現なので『楽しみ』だとか『元気』だとかのポジティブ表現に変えているというわけだ。
「走らないで」→「歩こうね」と同じ?
確かにネガティブ表現よりも、ポジティブ表現の方が良いという話はよく聞く。例えば「走らないで」よりも「ゆっくり歩こうね」と言う方が子供が守るとか、「失敗しないように!」と言っていると『失敗』に気持ちが持っていかれてしまうので「成功するように!」と言う方が良いというような内容だ。
また、『言霊』という言葉があるように、言ったことは残り、その言葉通りになってしまうともいう。だからこそ言葉には気をつけろというのもわかる。
言い換えても脳裏には『お疲れ様』
とはいえ、「お疲れ様」の場合は、正直、ややこしくないか?それに物凄く違和感がある。いちいち、頭の中で置き換えるたびに脳裏には『お疲れ様』がかすめる。そうであれば、本末転倒だ。
『お疲れ様』を言ってはいけないと考えるからこそ、『お疲れ様』を考えてしまう。本当に意味があるのだろうか。面倒で苦しくないのだろうか。「お疲れ様」という言葉はもはや「こんにちは」レベルの挨拶だ。正直、何も考えずに言うことが多い。
言われた方は困惑して疲れる
「お楽しみ様」だとか「お元気様」だとか「ワクワク様」と言い換えたところで何か良いことがあるのだろうか。
言っている本人は良いかもしれないが言われた側は「え?何?お疲れ様のこと?あ、『疲れ』と言いたくないから?」と今まで何も気にしていなかった『疲れ』に着目してしまい、疲れてしまう。言われた方はたまったもんじゃない。
とはいえ、言っている方も悪気はない。ポジティブ表現が良いと思っているから使っているだけだ。ポジティブな思考をただ広めようとしているだけなのである。
宗教用語や外国語のようなものだろう
ある意味、これは宗教のようだなとも感じた。布教するかどうかはその人の信心深さによるが、「広まったらさらに良い世界になる」と感じている人が使うのだろう。
そして、他に感じたことは、「外国語みたいなものなんだろうな」ということだ。もし「お疲れ様です」という言葉が元々日本には存在しなかった場合、誰もが「お楽しみ様」だとか「お元気様」だとか言っていたはずで違和感はなかったはずだ。
ジェームス・スキナー氏界隈のオタク用語?
実際に、この「お楽しみ様」という挨拶は『成功の9ステップ』などを発信しており、自己啓発業界の超著名人であるジェームス・スキナー氏が推奨している表現らしい。だから、彼の熱狂的なファンは真似することが多いのである。
つまり、ある意味ではジェームス・スキナー国の公用語なのだ。そこの国の人は「お楽しみ様」が当たり前の挨拶であり、違和感は全くないのだ。
郷に入れば郷に従えというもので、コミュニティー内で使用するのは理解できる。もし私もジェームス・スキナー氏のイベントに参加したら、イベント中は真似をするだろう。それは、共通言語なのだと割り切れるからだ。
しかし、つい外の世界に出てきた時にも「お楽しみ様」と言うと言語が通じない。まるでスワヒリ語で「こんにちは」という意味の「ジャンボ!」と挨拶した時のような反応が返ってくるのである。
そのように考えていると、気になるのは、ジェームス・スキナー氏が外国人だという点。日本語表現について、どこまで落とし込めているのかは不明だ。
Google先生に「お楽しみ様」「お元気様」「ワクワク様」について聞いてみた
では、実際に「お疲れ様」「お楽しみ様」「お元気様」がどのように訳されるのかグーグル先生に聞いてみた。
「お疲れ様」
まずは「お疲れ様」。
「Thank you」ならば良い印象だ。「ありがとう」という感謝であり、いわゆるポジティブ表現である。文句はないだろう。
「お楽しみ様」
次に、「お楽しみ様」。
これほど考え抜いて置き換えたのに「Hi」だけだ。所詮「やあ!」なのだ。あっけないにもほどがある。
「ワクワク様」
そして、「ワクワク様」。
直訳すると「こんにちは、興奮」。変態なのだろうか。某ワクワクメールにワクワクしてしまった類であろう。個人的にはワクワクさんへの挨拶だと思ったのだが残念だ。
「お元気様」
最後に「お元気様」。
「Dear Mr.Genki」なので、つまり「親愛なる元気様へ」だ。もはや挨拶でも何でもない。『元気』という名前の人物に思われている。
「お疲れ様」が1番まとも
Google英訳の結果を見ると、せっかく一生懸命頑張って「お疲れ様」を「お楽しみ様」だとか「ワクワク様」だとか「お元気様」と置き換えても、「やあ!」だとか「こんにちは、興奮」だとか「親愛なる元気様へ」程度にしか意味をなさない。
むしろ、「お疲れ様」が「ありがとう」なのだから、1番マシだろう。「お楽しみ様」「お元気様」「ワクワク様」愛用者の方々に、日本語を学び直すことをすすめたいレベルだ。
それにこう言ってしまったら終わりなのだが、そこまでして『お疲れ様』に固執する意味がわからない。「こんにちは」「ありがとうございました」「お世話になっております」で良いではないか。
「お楽しみ様」や「お元気様」の適切な使い方を考えるのであれば「昨夜もお楽しみ様でしたね」「今朝もお元気様ですね」でキマリだ。
それ以外の用法は私には思いつくことができない。なので、今後「お楽しみ様」だとか「お元気様」だとか言われた時は卑猥な表現として使われたのだと積極的に認識していきたいと思う。